地下人 第3話 最低限の新生活

山田太郎は今年から1人暮らしを始めた。

アルバイトを転々としながらお金を稼いだ結果、苦節15年にして賃貸だが1Kの家賃4万の住まいを得た。

苦節15年で新生活とは理解しがたいがアルバイトをしても行く先々で思わぬ災難に遭遇する。

上司や同僚からの理不尽かつ凄惨ないじめ、客から理不尽かつ凄惨な注文とクレーム。

しかし自称地下人の山田にとってそんなことはどこ吹く風だった。

最初からこうなると思って地獄の入り口にあえて飛び込んだ。

 

さて苦闘の末に30代後半にして手に入れた住まいだが、生活に必要なものを用意しなければならない。

洗濯機はないので基本水洗い。食器がないので基本紙皿と紙コップで我慢。ただし風呂関連の用品だけは揃うことができた。

しかし築年数はそんな古くはないのにガスが故障している。これではお風呂に入れないし、料理も作れない。不動産屋の態度も悪ければ、肝心のこのアパートの大家に会ったことがない。不動産屋に大家さんに会いたいと言うと「そんなのいるわけないでしょ」の一点張り。

とにかく住まいは手に入れたが元来人見知りの山田にとってまたもや安らぎなどない苦闘が再び始まった。

地下人 第2話 青き絶望

地下人山田太郎ツイッターのアカウントを100個持っている。

しかしそのほとんどは凍結しており、2個しかやってはいない。だがいずれもフォロー数2000人に対してフォロワー数2。

殺人的に少ない。しかし地上に上がるためにもやり続けなければならない。

自分で作った料理、自分で描いた風景画などを掲載しているにも関わらず、コメントもなければ「リツイート」や「いいね」などが一切ない。

ある日最悪なことが起きた。

 

頼みの2つのアカウントが突然凍結した。

絶望に突き落とされる山田太郎を尻目に翌日今度は、

 

ツイッターそのものが使えなくなるという事態にまで発展した。何かとてつもない違反を犯したのか?

 

そのまた次の日、今度はパソコンそのものが使えなくなる事態になった。起動ボタンを何度押しても青い画面に「ただいまパソコンが起動できません」というメッセージが表示されるのみだった。

 

買ってからようやく半年が経過したところだ。ちゃんと掃除など自分なりのメンテナンスをやっているにも関わらずだ。業者を呼んで修理を頼んだが、

 

「このパソコン、完全に死んでますね。買い替えることを強くお勧めします。」

「買ってからまだ半年ですよ。」

「残念ですがパソコンってそんなものです。どうやらちょっとのウイルスだけでもオジャンになりますね」

 

買い替えるようなカネは持っていない。

ツイッターの青い鳥どころか、今あるパソコンの画面は海より深い絶望のブルーであった。

 

地下人 第1話 悪い流れ

 

まずタイトルにある地下人とは、地底人とかそういう特殊ではなくまともな人間である。

「地下芸人」とか「地下アイドル」といった努力してもなかなか芽は出ないがそれでも歯を食いしばって狭いステージでパフォーマンスを披露する。

というように生まれてからいつまで経っても何もできないある男の物語である。

 

仮に彼の名前を山田太郎と名乗ろうか。

幼いころから人間関係は極めて悪い。

「長男だから太郎だろ!」と生まれて性別が男とわかったとき父が即決した。

山田太郎という名前のせいかどこ行ってもナメられる。彼が言ったことに対して誰も信用しない。

山田太郎という名前はよく「名前記入例」の定番ということなので偽名扱いされる。

顔つきもなかなかイケてなくそこまで不細工と呼べるレベルではないが、やはり彼をイケメンと呼ぶ者がいれば変人扱いされるであろう。

今回は初回ということなのでこの辺でお開きとする。

 

以上。

浜本太郎の後悔 第九回

前回の続き。

浜本太郎は小学校時代にいろんなことがありすぎて成績も人間関係も最悪だった。

そしてこの状況から逃げた末に森に倒れ、老夫婦に救われた。事情を説明し老夫婦の養子となり浜村太郎という名前で地元の小学校に転校した。

卒業2ヶ月前の転校であるため印象に残らなかった。

 

中学生になった。小学校時代の大失敗を打開すべく勉強をがんばった。部活は一切せず勉強だけに集中した。

だが中学3年に入ったころに養父母である老夫婦が相次いで急死。急死ということでかねてより養子である浜村を邪険に扱っている親類から疑いをかけられた。身の潔白をしようにもどうせ信じてもらえないことはわかっている。

老夫婦の遺産は親類たちに全部相続され太郎には中学生なので一円も与えなかった。

このこともあってか学校の成績はオール1。しかしその前つまり1年生のころからオール1。しかも驚いたことに入学から今に至るまで欠席扱いにされていた。そもそも影が薄いためか誰からも気づかれなかった。

 

高校は行かなかった。いやこの状態で行けるという選択肢も存在しない。それからの30数年は空白だった。40代になってからかある行動に出る。かねてより自動車免許の参考書を毎日読みまくり一度でもいいから運転してみたいと思うようになった。

 

外に出て偶然エンジンをかけたまま停止していたワンボックスカーを見つけた。こっそり運転席に乗り誰もいないことを確認して参考書のとおりにギアをDにしてアクセルを踏んだ。そのまま進んだ。初めてなので最初は車が動いたことに驚いたが、すぐ慣れた。しかしあくまでも他人の車、盗難してしまった。

当然盗まれた持ち主は警察に通報しているだろう。どこか遠くへ逃げよう。この車にGPSが搭載されていたら外そう。そしてワンボックスにあった機械を取り外したおかげか警察からの追跡はなかった。盗んだ車は移動用と練習用として3週間使用した。

 

もはや太郎は老夫婦の親類とも縁がなくなり盗みを人生に捧げることで名前も「浜本太郎」と名乗った。

 

という浜本太郎自身の理想を語っている。

当然今までの話は架空である。

 

 

浜本太郎の後悔 第八回

浜本太郎。50歳。4月1日生まれ。独身。

浜本は市立の小学校に入学した。

 

「小学校に入学したぞー!!勉強がんばるぞー!友達100人作るぞー!」

(現実)

小学1年。一人で外遊びに毎日夜まで夢中になり宿題もテストも疎かになる。

人間よりも野犬にいじめられる。

モノをよく失くす。

 

小学2年。進級早々教科書謎の紛失。クラスの女性担任の不倫発覚、辞任。

1年では遊びすぎて通信簿ではオール1だったので宿題を真面目にこなすが、テストは全教科0点。2年の通信簿も結局オール1。

 

小学3年。クラス替えで心機一転して新たな挑戦として水泳、野球、サッカー、塾と習い事に集中するもわずか2週間でいずれも挫折。そして学校の成績もオール1。

小学4年。学校の決まりでクラブ活動に取り組まなければならず、実験クラブに入る。しかし全部チンプンカンプンで最後までサボらず取り組んだのだが、ダメだった。学校の成績はやっぱりオール1。

 

小学5年。上級生になりたくましくなければならない。そしてこれまでの反省点を分析して臨んだ矢先、給食費盗難事件が発生。そしてなぜか彼の机に同級生の給食費が入っていたので犯人にされる。しかし同級生はここで初めて浜本の存在を知った。

浜本は今まで誰にも気づかれなかったことに大きなショックを受ける。そして給食費を盗んだことに同級生はおろか、自身の家族からも白い眼を向けられる肩身が狭い生活を強いられる。学校の成績はもちろんオール1。

小学6年。小学校生活最後の年。給食費盗難事件で人間関係が悪化。

そんな中迎えた修学旅行。旅行先の旅館で偶然宿泊していた指定暴力団の組長が射殺されるという事件が発生。目撃者の話では

「修学旅行のために宿泊している小学校の学生が拳銃を持ち歩いていた」とあり、警察は浜本の同級生を1人ずつ調べた。しかしそこに浜本の姿はない。

浜本は旅館の外に荷物を持って逃げていた。親分を撃った拳銃を所持したまま。

浜本がそのまま逃亡し、倒れた。

 

浜本が目を覚ますと見知らぬ家のベッドにいた。そこへ老夫婦がやってきた。浜本は逃げて倒れたショックで今までの記憶がすべて失われた。洋服のタグに「浜本」と書かれていたので「浜本」とだけは覚えているがそれ以外は全部記憶が失われている。

老夫婦は浜本を養子として迎えた。そして老夫婦の名前である「浜村」に変え「太郎」という名前を与えられた。

老夫婦は異常なまでに浜村太郎を可愛がったが、ほかの親族はどこの子かわからない彼を異常なまでに邪険に扱った。

 

次回へつづく。

 

 

浜本太郎の後悔 第七回

浜本太郎は小学生。今日も学習塾に通う。学習塾にはさまざまな町の小学校の学生が教室に集まっている。なので浜本は会話しない。所詮知らない者同士。

 

最近ではタブレットPCを使った授業も行われている。周りの子はうまく使いこなせているのに浜本だけは使用して半年が経つのにいまだに電源がどこなのかもわからない。

 

教えてもらおうにも知らない子ばかりだし、先生は厳しく怖いし。するとぐうぜんにもPCがついた。早速取り掛かろうとしたその時。

 

パスワード入力表示が出た。知らない…。パスワードなんてあったのか?ま、適当にやろう。しかしいくら適当に入力しても表示されるのは、

「パスワードが違います。もう一度試してください」

 

浜本は悪戦苦闘していると黒板を見て

「+-×÷%〒****…」

と算数で使う文字をふんだんに取り入れた。

その時。パスワード解除ができた。

何というパスワードだ。アバウトにも程がある。

 

浜本はその日から遅れを取り戻すべく何かに取り憑かれたように猛勉強をした。小学校での休み時間でも

「とりあえず今習っているのはこれかな?いや、これじゃないな。そうだ。これだ。」

 

猛勉強の末テストは100点の連続。しかし周りは彼を褒めないどころか見向きもしない。通っている小学校でも全教科100点なのだが、誰も彼に関心がない。浜本はそれでも勉強をする。

 

数年が経った。

「太郎…。もういい歳だから勉強はやめなさい。」

「いきなりなんだよ!勉強しないといい大学に入れないし、いいところで働けないよ!」

「あんた、いい歳して何勉強に熱中してるんだい!さっさと仕事見つけなさい!」

 

浜本太郎 47歳。いまだに彼はタブレットPCで小学1年の算数をやり続けていた。

 

第七回おわり。

 

浜本太郎の後悔 第六回

浜本太郎はもうすぐ40を迎える。人々は浜本がやってくるたびに手で鼻を押さえながら走って逃げていく。

 

それが女性に限らず老若男女問わず。だらしない体型の浜本と同じ年齢の男性からも逃げられる。

 

浜本はある日ホームセンターにやってきた。早速展示されている売り物の花が浜本が通り過ぎた瞬間枯れ始めた。

 

犬が一斉に狂ったように吠える。浜本が近づくと激しく吠えていた売り物のトイプードルが泡を吐いて死んだ。

 

浜本がホームセンターを去った後店員全員が一斉に店内に消臭剤を振り撒くる。

 

浜本が公園にやってきてベンチに座っていると突如5、6人の不良にカツアゲされる。

「おい!カネ出せ!カネよこせコラァ!」

「持ってないよ。」

「とっととよこさんかい!」

不良の1人が殴り掛かろうとした瞬間隣にいた不良が嘔吐をした。そして殴り掛かろうとした不良を含め一斉に激しい嘔吐をする。その隙に浜本は逃げた。

 

何があったかわからないが浜本は助かった。しかしなぜ浜本がいろんな場所にやってくるたびに周りの人は逃げ出すのか?浜本が道を通るたびに草木は枯れ小動物は嘔吐して死ぬのか?

 

(ニュース)

「スキンヘッドの男が通るたびに人々が倒れるか発狂し、電子機器は狂い、その男を今すぐ抹殺しろと警察署で暴動も起きております。」

(とある専門家)

「彼の体臭はもはやドリアン、いや、世界一臭い食べ物として有名なシュールストレミングの5倍を超えるほどでもはや疫病級をはるかに過ぎています。」

 

「ふん!くだらん!」

しかし彼が知らないところで自宅周辺には数台のパトカーや軍用車両が囲んでいた。

 

第六回おわり。