浜本太郎の後悔 第七回

浜本太郎は小学生。今日も学習塾に通う。学習塾にはさまざまな町の小学校の学生が教室に集まっている。なので浜本は会話しない。所詮知らない者同士。

 

最近ではタブレットPCを使った授業も行われている。周りの子はうまく使いこなせているのに浜本だけは使用して半年が経つのにいまだに電源がどこなのかもわからない。

 

教えてもらおうにも知らない子ばかりだし、先生は厳しく怖いし。するとぐうぜんにもPCがついた。早速取り掛かろうとしたその時。

 

パスワード入力表示が出た。知らない…。パスワードなんてあったのか?ま、適当にやろう。しかしいくら適当に入力しても表示されるのは、

「パスワードが違います。もう一度試してください」

 

浜本は悪戦苦闘していると黒板を見て

「+-×÷%〒****…」

と算数で使う文字をふんだんに取り入れた。

その時。パスワード解除ができた。

何というパスワードだ。アバウトにも程がある。

 

浜本はその日から遅れを取り戻すべく何かに取り憑かれたように猛勉強をした。小学校での休み時間でも

「とりあえず今習っているのはこれかな?いや、これじゃないな。そうだ。これだ。」

 

猛勉強の末テストは100点の連続。しかし周りは彼を褒めないどころか見向きもしない。通っている小学校でも全教科100点なのだが、誰も彼に関心がない。浜本はそれでも勉強をする。

 

数年が経った。

「太郎…。もういい歳だから勉強はやめなさい。」

「いきなりなんだよ!勉強しないといい大学に入れないし、いいところで働けないよ!」

「あんた、いい歳して何勉強に熱中してるんだい!さっさと仕事見つけなさい!」

 

浜本太郎 47歳。いまだに彼はタブレットPCで小学1年の算数をやり続けていた。

 

第七回おわり。